__ 去年の春。
ずっと片思いしていた仔とクラスが分かれ、少しホッとしたものの、
イマイチ盛り上がらないクラスを、ボクは不満に思っていた。
でも、その時はまだ、イリの存在には気づいていなかった。
ボクが所属している「生徒会」。
早くも、来年度の
『学園祭』について、話し合いが進んでいる。
そう、イリのコトを知ったのは、その頃だった・・・。
__ 夏、顔馴染みの女子と一緒に、準主役に立候補したイリ。
暑い日が続く中、冷房がよく利いた講堂で、
ボクたちの“演劇”の練習が、進められていた。
「あ~、この台詞、なかなか覚えられへん!」
「本番では、もっと緊張するで。」
「もう、何でそんなこと言うの」
イリとボク、最初はこんな感じだった。
確かに、イリの役どころはとても重要だった。
廃部寸前の文化部を残すよう説得するため、
イリ演じる部員が、生徒会長らを説得する場面。
ボクらが担当した“音響”ともピッタリ合わせなければならない。
練習の時は、一度も成功していなかった。
音響チームは、不安だった。
必死に練習を積み重ねるボクたち。
その成果もあってか、本番では大成功だった。
「ホンマ、金沢さんに救われたわ。」
達成感で一杯の中、ボクはスタッフ陣と、この言葉を繰り返していた。
これが、イリのコトを気になりだした”きっかけ”だったのかもしれない。
「文化祭」が終わってから、
イリとの交流は活発になった。
向こうから、いつも話しかけてくれたのだ。
おまけに、ボクは
イリと“斜め前”の席になった。
ボクと友達のソウタの会話に、突然入って来たイリ。
好きな漫画家の話をしたり、授業の愚痴を言い合ったりしていた。
「お疲れ。模試、どうやった?」
「う~ん、微妙かな。」
不意に目が合ったイリに、ボクは話しかける。
そういえば、先生との三者面談の待ち時間、
ひょっこり教室に現れたイリに、声を掛けたこともあったっけ。
「あれ、金沢さん、どうしたん?」
「私って、面談、何時からやったっけ?」
「ボクの2つ後ろじゃなかったっけ?」
面談のタイムスケジュールを探して、
教室内をウロウロするイリに、ボクは顔を緩ませた。
ホントに、何気ないコトばかりだけど、
これも、
“イリとの大切な想い出”の一ページだった。__
先日、先生から1枚のCDを渡された。
それは、
“イリとの最後の想い出”となった、
「修学旅行」の文集ファイルだった・・・
__ 秋、2年生最大の行事
『海外研修旅行』。
偶然にも、イリと同じコースに行くことになった。
事前学習が続くある日、イリはボクの元に駆け寄って来た。
「なぁなぁ、私たちが泊まるのって、“ビジネスホテル”やって!」
「えっ、マジで!?何で、知ってるん?」
「インターネットで調べたねん。」
何故ボクに伝えてきたのか、未だ分からないが、
そんな会話すら、ボクには嬉しかった。
そして迎えた、修学旅行の当日。
駅で見掛けた、
イリの私服姿には驚いた。
制服を着ていると分からなかった、イリの魅力。
何と言ったらイイか、分からないけど、とても素敵だった。
[イリともっと仲良くなりたい!]
修学旅行中は毎日、イリと話すことを目標とした。
初日の空港で、必死にカバンを閉めていたイリ、
大きく仏像を前に、拝むポーズで写真を撮ってもらっていたイリ・・・
他の人から見たら、変に思われるかもしれないが、
イリと話すため、ボクは必死にネタを探していた。
毎日、イリに構ってもらえる毎日に嬉しさを感じながら、
旅行を楽しんでいた中、ボクは、気になる光景を見掛けた。
旅行も終盤のある日、お土産屋さんで、
ボクたちの班リーダーと、イリが親しげに話していたのだ。
後から聞いた話によると、リーダーとイリは近くに住んでいて、
中学校時代の同級生だという。
その事実を聞いても、ボクはいつしか
リーダーに“嫉妬心”を抱き始めていた。
そのコトを気にしながら、修学旅行は終わりを告げた。
最終日は、イリと話すことが出来なかった。__
それから、イリとは素っ気ない関係になり、
おまけに、ソウタと“三角関係”だと分かった。
ボクと同じぐらい、ソウタとも仲が良さそうだったイリ。
表ではあまり気にしていない振りをしていたが、
「ソウタにだけは、絶対にイリを盗られたくない。」と、
決意を胸に秘めていた。
__ そして、
運命のあの日。
ボクのたった一言で、イリとの“普通の関係”は壊れてしまった・・・。
集会で集まった時に、無邪気なイリと話した次の日のことだった。
≪第2章 気まずい毎日、取り戻せない時間≫
「もう一度、“前の関係”を取り戻せないかな?」
イリへの“最後の手紙”を下駄箱に入れてから、数日。
でも、イリからの返事はなかった。
“斜め前”での席でも、どんなに近くにいても、願いは届かない。
お互い、気まずい雰囲気を共有していた。
そんな憂鬱な日々を過ごしていたある日、突然の展開を見せる。
「次の時間、情報やっけ?」
「そういえば、前はセキュリティーの話やったな。」
隣になったソウタと、そんな会話をしている時だった。
『なぁ、“解凍ソフト”ってあるの?』
誰が、誰に対して聞いているのだろう。
ボクはふいに顔を上げる・・・
__
ボクの前に立っていたのは、
まさかのイリだった。
ボクもソウタも、一瞬言葉を失う。
「突然の質問やな~。」
落ち着きを取り戻したボクは、
これまでのコトは無かったように、イリに話しかける。
しかし、会話の主導権は、まだイリに告白していない
ソウタに握られてしまった。
イリに対して、丁寧に説明するソウタ。
正直、ボクは悔しかった。
でも、またイリに構ってもらえた嬉しさに、一安心するボク。
これで、もう辛い思いはしなくてイイ・・・
ところが、
イリとはそれっきりだった。
時には、英語でペアになることはあっても、
「教科書、見せて。」と言われ、貸してあげても・・・
これ以上、ボクはイリに素直になれなかった。
イリが心を許してくれていたとしても、
ボクはイリのコトを、拒絶していた。
それ以来、
ボクとイリは完全に疎遠になった・・・。
≪エピローグ 死への願望~そして、春≫
イリの声を聞き,顔を見る度、
ボクは顔を背け、宙を仰いだ。
前よりもハイテンションで、大声で笑って、
必死に本心を押し殺していた。
2年生最後の席替え。
イリはボクの斜め後ろ、ソウタはイリの斜め前。
全てにおいて、ボクはソウタに対し、劣等感を抱くようになった。
「自分は生きている意味があるのだろうか?」
そんな疑問を持ち始めた頃、国語の授業で出会ったのは、
夏目漱石の小説『こころ』だった。
愛の三角関係に陥った、2人の青年。
主人公は友達を出し抜き、女性を射止める。
そして、好きだった女性を奪われた友達は、自殺する・・・。
立場や設定は随分違っているが、何となく似ている。
ボクの心には、
再び“死”への願望が芽生え始めていた。
今や、
“生きる希望”は何もない。
イリを失った絶望感、友達にどんなに励まされても、
ボクの心の叫びは、誰にも分からない。
イリとの想い出を封印しようとすると、
高校2年生の全ての思い出が無くなる。
別に、誰にも心配してもらえなくてもイイ。
とにかく、自分を傷つけたい・・・
__ そして、ついに実行してしまった。
一人ぼっちの真夜中、風邪薬を一気飲みした。
「風邪薬」なんかで、死ねるはずないと知りながら。
翌日、目を覚ますと、地が揺れていた。
頭がフラフラして、階段から落ちそうにもなった。
息が絶え絶えになり、体中に違和感が走る。
吐き気もした、震えが止まらなかった・・・
しかし、結局生き残ってしまった。__
確かに、自分を傷つけることはできた。
しかし、周りは何も変わらなかった。
『相手から見返りを求めたとしても、
自分が行動しなければ何も始まらない。』
友達から、そう言われた。
ボクは自分から、イリを拒絶していた。
イリを遠ざける態度が、
関係を疎遠にしていたのかもしれない。
引っ込み思案で、ひたすらネガティブで、
なかなか行動に移せないボクだけど、出来ることなら
時間をかけて、キミとの関係を取り戻したい。
イリたちと過ごす、2年C組の時間も残りわずか。
実際に、やり直せるかは分からないけど。
決意新たに、未来へと再び歩み始める。
“生きる理由”を探すために・・・
※この物語は、ほぼノンフィクションです。
ただし、名前等は架空のもので、事実とは異なります。
≪完≫
管理人・天の“思い出のラブソング”
♪Period 歌:TOKIO
管理人・天が、この恋愛小説の主題歌に
勝手に指名した、TOKIOの「Period」。
先日、偶然購入したTOKIOのシングルCDに、
カップリング曲として、入っていたのがこの曲。
すっと入ってくる歌詞・・・
かなり、今のボクの気持ちと似ている気がしました
サビでの美しいハモリ・・・感動しました。
♪366日 歌:HY
主題歌候補に挙がっていた、
もう1曲は、HYの「366日」。
注目を集めた携帯小説が原作で、
フジテレビ系列で放送されたドラマ『赤い糸』の主題歌。
個人的には、“究極のラブバラード”!
「どんな結末であれ、それでもイイと思える恋だった」・・・
多分違うと思いますが、今の気持ちと同じです
2番の思い悩む歌詞にも、少し共感。
切ないバラード・・・お気に入りです。
♪Faith 歌:伊藤由奈
続いては、ボクのお気に入り曲。
ドラマ「アンフェア」の主題歌。
こちらも、切ないラブバラードです。
「あの日決めたことは もう悔やまない」・・・
比較的、前向きな歌?
カラオケでも得意な方で、よく歌っています。
≪本作 挿入歌編≫
♪タビダチノウタ 歌:Dream5
♪きっと、大丈夫 歌:千帆・凛・奈々(てれび戦士)
最後は、この恋愛小説の挿入歌に
勝手に指名した、この2曲。
ラブソングではありませんが、お気に入りの
この2曲は入れたいと思っていました。
まずは、Dream5の卒業ソング『♪タビダチノウタ』。
一見、切ない感じながら、ラップもあって、斬新な曲。
ボクが気になったのは、2番のサビの部分。
「どんなに叫んでも キミはいない 失くしてからやっと分かった」
・・・恋うたではないですが、こんな気持ちです。
そして、MTK『♪きっと、大丈夫』。
“大人への成長”をテーマにした、この曲。
「辛い時でも、楽しかった日々を思い出して、
弱気にならず、前へ進んでいこう」という歌のメッセージ。
ボク自身も、ナゼか励まされていました。
相変わらず、
“情緒不安定”な毎日を過ごしていますが。
何とか、生きていきます。
この2曲を選んだ理由、
“きっと、大丈夫 強くなるから”!
前向きに頑張っていこう、そういうボクの決意だと
ご理解いただければ、有難いです。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
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